サブブランドの格安料金とは?
先日行われた有識者会合「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の第1回会議。
これは格安SIM(MVNO)を更に世間に普及させるにあたって問題となっている事柄を話し合う会合なのだが、中でも大手キャリアのサブブランドと呼ばれる格安SIMが料金的な面や、インフラ・店舗設備の面で優遇されているのではないかという議題が大きく取り上げられた。
サブブランドとは具体的にはauと同じKDDIグループの「UQmobile」とSoftbankと同じソフトバンクグループの「Y!mobile」の2社のことだ。
もともと通信設備を有している2社の傘下ということもあり、通信速度を確保しやすかったり、多彩な料金プランを打ち出しやすい環境が整っているのは確か。
広告宣伝費も一般のMVNOとはケタ違い。有名タレントを使って認知度を高めており、Y!mobile・UQmobileともに一般の認知度は約90%と非常に高い。
どんなに安くてもユーザーに認知されていなかったら意味がない点を考えると、サブブランドの広告は非常に効果的であると言える。
さて肝心の料金プランだが、サブブランド各社とも最も安いプランで毎月1,480円という料金を打ち出している。
この料金プランのカラクリは「家族割」と「光回線の同時契約」がミソ。
純粋なスマホ回線契約だけではなく、あくまでも家族での複数台契約か固定通信費(ネット回線利用料)とのセットで実現している価格なのである。セットで申し込みを行うことで毎月の料金から500円引きとなるキャンペーンを適用した場合の料金なので、家族割やネット回線の通信費とセットでなければ月々1,980円という料金となる。
一般的なMVNOとの料金差は一体いくらになるのか?
では具体的に他のMVNOとの料金差はどのくらいあるのだろうか。
業界の先駆者でもある「IIJmio」のプランと比較してみたい。
今回比較する機種はiPhoneSEの32GB。
データ容量は毎月2~3GB、通話はかけ放題プランを付けて新規契約で2年間使った場合の料金は以下の通り。(なおSIM発行料金など諸経費は考慮していません)
UQmobile【KDDIグループ】
・おしゃべりプラン(S)
データ容量:2GB
通話:5分以内かけ放題
1年目初月:3,326円
1年目2ヶ月以降:3,218円/月
2年目以降:4,298円/月
1年目38,724円+2年目51,576円=90,300円
2年間で90,300円
Y!mobile【ソフトバンクグループ】
・スマホプランS
データ容量:2GB
通話:10分以内かけ放題
1年目:3,218円
2年目以降:4,298円
購入時540円+1年目38,616円+2年目51,576円
2年間で90,732円
IIJmio【MVNO代表】
IIJmioには端末セットにiPhoneSEがないので、アップルストアにて一括購入した想定です。
アップルストア価格:42,984円
・ミニマムスタートプラン
データ通信:3GB
通話:3分以内かけ放題
2,200円/月(2年目以降も変わらず)
本体代金42,984円+52,800円=95,784円
2年間で95,784円
結果
iPhoneSEの場合、近い条件の契約で比較するとやはり大手キャリアのサブブランドが2年間で5,000円程度安いことがわかる。このことからもサブブランドの料金面でのアドバンテージはあると言っていいだろう。UQmobileなら価格面で、Y!mobileなら10分間のかけ放題プランに魅力を感じられるし、大手キャリアのグループ会社で実効速度も十分となればこの2社が人気な理由もなんとなく納得できる。
ちなみに今回はiPhoneSEでの比較となったが、その他のandroidスマホの場合はこの限りではない。
MVNO代表として比較対象となったIIJmioはどちらかというとSIMフリー系端末のセットに強みを持っているし、iPhoneSE32GBでも通話し放題プランを削れば2年使っても本体代金込み8万円台の維持費で使うことも可能だ。プランをある程度柔軟に組み立てられるのもMVNOのメリットと言えよう。
加えて価格が以外にも気を付けるべき点があるので、あらためて整理してみようと思う。
サブブランド2社
良い点
・話し放題プランで2年間使い続けるならトータルで一番安く使える。
・申し込みがwebからも店頭からもできる。
・通信速度が他のMVNOと比較して速めである。
気を付けるべき点
・2年未満で解約すると違約金が発生する。
・同時契約するiPhoneはSIMフリーではないので使いまわしできない。
・データ容量が最小のプランだと2GBしかない。
一般的なMVNO
良い点
・2年縛りナシ。解約はいつでも違約金ナシで可能。
※2018/01/19追記
誤解があるといけないので追記を。
違約金ナシで解約可能なのはデータ通信専用プランのみ。音声通話付きプランの場合は契約から12か月程度は違約金がかかるものが多い。MVNOによっては「事務手数料」という名目で12か月未満でのMNP(他社に番号そのままで乗り換えること)に多額の費用を請求するケースもあるので音声通話付きSIMを申し込む際は注意されたし。
・SIM単品で申し込めるので中古端末などSIMフリー端末を自在に使いまわししやすい。
・トッピング感覚で必要なプランを追加できるので、選択次第では価格をかなり抑えられる。
気を付けるべき点
・話し放題プランだとサブブランド2社よりも高くなる傾向がある。
・回線速度ではサブブランドと比べて不利。
・実店舗が少ない。(もしくは無い)
こうしてメリットとデメリットをまとめてみると、多くのユーザーが気にする「料金」と「通信速度」にアドバンテージがあるサブブランドのほうだ。
一方の一般的なMVNOは料金や通信面こそサブブランドに譲るも、中古端末やSIMフリー端末と組み合わせればサブブランドをしのぐコストパフォーマンスを出すことができるし、カウントフリーオプションなど独自のサービスを充実させていけば十分普及する可能性はある。
話は冒頭の検討会に戻るが、中古端末の自由な売買を促進させる市場の形成が、日本国内ではまだ十分ではないことも検討課題としてのぼっている。
auが今夏、契約者本人でないとSIMロック解除できないように規約を変更したのも記憶に新しいが、大手キャリアが嫌がらせのごとく端末にSIMロックを施して自由に端末を使わせないような戦略をとっている事実こそ、MVNOの普及を大きく阻害している一番の原因となっているのはまぎれもない事実なのだ。
今回の検討会を皮切りに、これからは総務省主導のもとで自由な形態のモバイル通信契約のあり方が活発に議論されることになるだろう。
大手キャリアの受け皿として立ちはだかるサブブランドに、MVNOがしっかり対抗できる土壌をまずは作り上げていってほしい。
端末セットで割引てんこ盛りで実質無料で・・・
そんなうたい文句でユーザーを囲い込むキャリア陣営に鋭いメスが入ることを願うばかりだ。
イイトコドリができるのはUQmobile
そんな現状の格安SIM環境を考えると、最適解はUQmobileになるだろうか。
なぜならY!mobileよりもプランに柔軟性があり、さらにSIM単体での申し込みも可能という点が評価できるからである。
おしゃべりプランやピッタリプランなどに隠れがちだが、UQmobileには「データ高速+音声通話プラン」というプランがある。
これはかけ放題・無料通話分がないかわりにデータ通信容量が3GB/月となり、料金も月々1,680円(税抜)で利用可能なプランとなっている。
つまり電話はほとんどしないという「かけ放題不要ユーザー」と、MVNOの通信速度に不満があるという「通信速度重視ユーザー」のニーズを両方受け止められる貴重なプランなのだ。
これは数ある格安SIMの中からUQmobileを選択する非常に大きなモチベーションとなる。
なぜなら出来るだけ低価格で高品質な通信サービスを受けたいという潜在的なニーズはかなりのユーザーに存在しているはずだからである。
実際にサブブランド以外のMVNOでは、キャリアからMVNOに移るユーザーが増えたことで速度に不満を持つ声がちらほら漏れ聞こえてくる段階に入っている。
そんな状況でもUQmobileの担当者に実際に話を聞くと「UQmobileは通信帯域にかなりの余裕があります。これから多くのユーザーがMNPなどでUQmobileに移転してきても十分サービスを維持できる自信があります。」と言い切ってみせた。
これはサブブランドという帯域を確保しやすいメリットと、SIMカード単体で申し込めるというMVNOのメリットを併せ持ったまさに「イイトコドリ」な通信ブランドとして独自の地位を築くことができたのだと言える。
今後、中古端末がさらに自由に取引できる環境が整えば、さらにそのメリットは引き立つことになる。
ただ安いだけではなく、多くのユーザーのニーズを満たすプランを提供するUQmobile。もうUQmobileだけあればいいんじゃないかとも思えてしまうが、今後もっと魅力的なプランが誕生することもあり得るだろう。まだまだ予断を許さないが、いつか決断しないとなかなか申し込みを行うことができないので悩ましい。
そんな感じで今後も格安SIM業界の動向から目が離せない状況が続きそうだ。